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第1回 無名戦17 参加曲 Trooping the Colourの解説~曲について(2020/06/16)

こんばんは。motsです。

2020/6/16現在、「第17回自称無名BMS作家が物申す! 」イベントが絶賛開催中です。インプレ開始より1週間経ったところなので、そろそろ自身の参加曲であるTrooping the Colourについて解説していきたいと思います。曲とBGAの2回に分けて解説していく予定です。譜面についてはそこまで造詣は深くなく、最もプレイされそうなANOTHERは外注させて頂いているので、あまり語れることはないです…。なので、譜面については記事にはしませんので、ご了承ください。

一応、譜面に関しては個別の記事にする程ではないですが、ANOTHERまでの難易度についてはスクラッチ交えた3音までの同時押しにおさえることは拘りました。ANOTHER譜面は外注しているものの、そこだけは守ってもらうようにお願いしました。これは単純にPCキーボードで同時押しが辛い環境でプレイしている人向けの配慮です。スクラッチ+2音も組み合わせとキーボードによっては同時押しできないこともあるかと思いますが、何も配慮しないよりはマシかな、ということで。そのため、人によってはANOTHERも物足りなく感じる可能性もあるかと思いますが、一応さらに上位の隠し譜面も用意はしてあるので、刺激足りない場合はそちらもプレイをお願いします。

…ということで、本題に入ります。今回は第1回として、曲についての解説です。

※注意事項:この記事は、音楽や作曲に関する内容が出てきますが、筆者は独学のにわか知識しか持ち合わせておらず、結構変なことを言っていると思います。内容についてはあまり真に受けないようにお願いします。

1.曲の構想について

まず、無名戦向けにははじめに本当は別の曲を出そうとしました。でも、とある事情あり、やめました。

こちらは8月のWWイベントに回すことにしています。これについてはネタバレ回避のため、これ以上は伏せておきます。

​で、新たに無名戦の曲の構想を考える上で、自分ならではの曲って何だろう、と考えました。作曲経験はあまり豊富ではないし、音ゲーもだいぶブランクあるし、正統派の音ゲー曲で勝負しても、他の出場作品には敵わないことは目に見えている。じゃあ、アプローチとして、自分でも作れそうであまり音ゲー(というよりBMS界隈)では見ないジャンルでオンリーワン路線で攻めよう、ということで、割とすぐに、吹奏楽曲だ!という結論に達しました。元々吹奏楽はやっていたし、2000年~2001年の活動中に吹奏楽のコピーBMSは幾つか作っていた経験もある。当時も吹奏楽曲のBMSを作っていたのは自分くらいだと思います(クオリティは別として…)。

​フルオーケストラ、という選択肢もあったけど、去年の無名戦でヤバイのがあったので、こんなのとまともに比較されたら敵わん、ということで避けました。まあ、広義ではオーケストラだし、普通に比較されちゃいそうな気はするけど、路線が違うんだ…!と言い張ることで事なきを得ようという作戦です。でも、あの曲は本当に凄いです…作曲面もミックス面も確かなセンスと知識に裏打ちされためちゃくちゃレベル高い作品だと思います。BMS作品としては確実に自分が知っている歴代ベスト5には入りそうです。……と、話の脱線はこのあたりまでにしておきましょう。話の本線に戻ります。

曲のコンセプトは、何かBMSに触れることで、ちょっとした雑学を増やしてもらえたらいいな、という思いから題材を探しました。このやり方は長尺BMSイベントで序曲1812年を出した時、同じように曲の背景を説明していったことが一部で割と好評だったようなので、同じようなコンセプトでできないか考えたものです。6月の無名戦の開催時期は丁度、ロンドンでTrooping the Colourが開催される時期で、日本では一般的にそこまで認知されているものではなさそうだし、これを題材にしよう、と決めました。

ジャンルと題材が決まったことで、曲の雰囲気、曲の構成を決めていきます。ただTrooping the Colourを題材にするだけだと、自然とお祭り的な三拍子の行進曲を思い浮かべましたが、それって音ゲー的にどうなんだろう、ということでもう少し頭を捻りました。音ゲー的にはある程度のBPMや疾走感は欲しい。コピー曲なら好きな曲あれば割と音ゲー向けかどうかは気にせずBMSは作っていたけど、オリジナルなら自分で作る分、考える余地はあると思いました。そこで、いろいろなレファレンス曲からヒントを得よう、としました。

レファレンス曲の中で、注目したのがイギリス出身の吹奏楽界の巨匠、Phillipe Sparke先生(以下、敬称略)の作品です。代表曲は『ジュビリー序曲』『オリエント急行』などで、吹部出身者ならおそらく馴染みのあるはずの作曲家だと思います。Phillipe Sparkeの作品の中に、『祝典のための音楽』という曲があるのですが、まさにこの曲が今回作りたい曲のテーマと合致していました。勢いのあるトランペットのファンファーレから始まり、曲はエモいメロディ展開で終始速めのBPMで疾走していきます。こういう曲ならBMS化した時に音ゲーとしてちゃんと映えそうだ、と思いました。ということで、こんな雰囲気の曲を作りたいな​、というイメージをまず持ちました。

 

ご参考:Phillipe Sparke 『祝典のための音楽』

https://www.youtube.com/watch?v=u7wx53N85N8

※リンクは張っていないので、視聴されたい方はURLをブラウザに張り付けて飛んでください。

出来上がったものは結局イメージを固めていくうちにだいぶ違ったものになりましたが、この曲のエッセンスはところどころで取り入れていたと思います。

2.曲の構成について

曲構成のコンセプトとしては、以下は取り入れられると良いな、と考えました。

1) 動→静→動の構成をしっかり持つ。

2) 曲尺的にはBMSで標準とされる3分以内におさめる。

3) はじめにイントロで掴みにかかり、盛り上げた後は、小さな楽器編成に一気に落として、そこから徐々に大編成になっていくボレロ形式を取り入れる

4) 途中で静になるところは曲の雰囲気をガラッと変える。

5) 動の部分は単調にはせず、1展開か2展開はさせる。

6) 終盤で最初のフレーズに回帰する

7) できれば終盤転調してさらに盛り上げる

そうしてたどり着いたのは以下の構成です。これは曲を作りながら自然な展開をイメージして試行錯誤の上で辿りついたもので、最初から決めていたわけではありません。

イントロ→Aメロ(小→中規模編成)→Bメロ(中→大規模編成)→Aメロ(大規模編成)→Cメロ(静)→Dメロ(静から動へ徐々に盛り上げ)→Aメロ(大規模編成+α)→エンディング

エンディング前の転調については、曲尺的に長くなることと、若干しつこくなるような気がして入れるのはやめました。あれ?サビはどこ?と突っ込まれそうですが、Aメロがサビのようなものだと思って頂ければ…と思います。

3.曲で表現するテーマについて

曲で表現するテーマとしては、軍旗行進が元となっていることから、「勇ましさ」と「規律」をテーマに設定し、そのテーマを曲でどう表現するかを模索しました。

4.曲解説

ここからは曲そのものの解説です。イントロから順番に解説します。

1) イントロ

イントロの導入部分のトランペットのファンファーレはまさに『祝典のための音楽』のオマージュです。ただ、そのまま使うとパクりになってしまうので、フレーズを微妙に変えた上にマイナーコードに変えて、勇ましさをより前面に出すようにしました。トランペットのロングトーンも、スフォルツァンド(sfz)から一気にピアノ(p)に落とした上でクレッシェンド(cresc)をかけることでよりクレッシェンドの効果を増大させ、ここで聴いている人に作品の世界に一気に引き込ませることを意識しています。このsfz→p→crescはこの曲の中で割と多様しています。この表現ってまさに吹奏楽らしい表現なんじゃないかな、と個人的には思っています。

と、そんな感じでイントロはとにかく"掴み"にいくことを意識し、オマージュ元の『祝典のための音楽』にはなかったですが、さらにティンパニロールとスネアロールを冒頭に追加することで掴む力をより増大させました。また、譜面の視覚的にも少し驚きが生まれるように拍子も2/4にしていたりします。これも掴みを増すために意図した小細工です。

ファンファーレの後は、大規模な軍隊の勇ましさを更に表現するために金管楽器全編成で力強いメロディを奏でます。このメロディについては、こんな感じかな?と鼻歌を歌いながら自作しましたが、思い返すと多分無意識にこのあたりの曲の影響を受けていた気がします。

少林サッカー(2001年)

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%91%E6%9E%97%E3%82%B5%E3%83%83%E3%82%AB%E3%83%BC

少林サッカー OP

https://music-lovers.hatenablog.com/entry/2018/05/11/194755

※こちらもwikiじゃない方にはリンクは張っていないので、視聴されたい方はURLをブラウザに張り付けて飛んでください。

また、メロディに加えて木菅楽器全編成の駆け上がりも装飾として加えて更に盛り上げます。さらに、メロディの裏でリズム隊を加えて2種類のシンバルロールを走馬灯のように(?)走らせることで、これからはじまる大規模な軍旗行進の予告を表現しています。

メロディのコード進行については、完全5度のコードを平行移動させていくことで、力強さと規律を表現しています。この「完全5度の平行移動」は今回の作曲の肝の部分です。イントロに限らず、終始このコード進行で曲展開していっています(実際には更にオクターブユニゾンも加えています)。この完全5度のコードですが、パワーコードとも呼ばれているもので、シンプルなコードなだけに音の濁りを軽減してベース音の力強さを増し増しにする効果がある反面、多用しすぎると無機質な雰囲気になってしまう、とされているもので、連続使用はあまり推奨されていないもののようです。でも、今回は敢えてこれを多用しています。これは軍旗行進で皆揃って同じ動きをすることが求められるところに、人間性の排除を感じられるため、規律を表現するには非常に適している、と考えたためです。ただ、軍旗行進といっても所謂北朝鮮の軍事パレードのようなバッチり揃った行進とは違い、そこはUKクオリティです。Trooping the Colourをよく見ていると、たまにテキトーに歩いているおっちゃんもいたりします。なので、完全に無機質にはせず、どこか人間臭さを感じさせたい、という思いもあり、曲の随所に「人間的な表現」を散りばめてバランスをとっています。それは前述のロングトーンの表現だったり、よりエクスプレッションをきかせたロングトーンだったり、普通に聴いていても気づかないような不協和音を敢えて入れてみたり、等々。この部分は説明するより実際に聴いて感じてほしいところなので、詳細の説明は割愛します。

 

2) Aメロ(小→中規模編成)

イントロが終わり、Aメロに入ると拍子を4/4に変え、楽器編成を小規模にし、全体のダイナミクスも落とします。コード進行もマイナーコード進行からメジャーコード進行に変えることで、新たな始まりの予感や、祝典の始まりへの期待感を高めます。二種類のリズム隊で音量控えめに一定リズムを刻むことで、遠くから兵隊が行進してくる様子を表現しています。

二種類のリズム隊はホルンとバスーンでコードに合わせた2音の8分音符を刻み続けるリズム隊1と、トロンボーン、チューバ、ティンパニで一定リズムを刻み続けるリズム隊2です。その裏で更にパーカッションリズムも加えて音の厚みを増やし曲の表情を整えています。また、このリズムは単に曲の表情を整えるだけではなく、BMS化した時の配置のバリエーションを増やすことも意識して入れているものです。

旋律はAメロではクラリネットソロで奏で始めますが、それは隊を率いる先導者の行進を表現していて、その後楽器編成の厚みを増しダイナミクスを一段あげて同じ旋律を繰り返すことで、後続の部隊行進を表現しています。

このはじめのソロ旋律はホルンを使うか迷いましたが、リズム隊が金管楽器中心だったことと、木管楽器の中でも比較的硬めで存在感のある音を出せるクラリネットが割とこの場面では合うような気がしてクラリネットを使いました。

3) Bメロ(中→大規模編成)

Bメロはリズム隊のリズムは変えずにメロディを展開させる中、さらにティンパニ+シンバルロールを主コードとは敢えて不協和音となるように荒々しく挿入することで、行進の場面展開と更なる力強さを演出しています。また、ブレイクのように3/4拍子も混ぜることで、曲の展開に変化をつけ、単調さを排除しています。フレーズの繰り返しで楽器編成も増やし、さらに大規模な連隊行進へとつなぎます。

4) Aメロ(大規模編成)

曲の構成は2)のAメロと同様ですが、ここではじめてBMSでいうところの所謂"階段配置"となる木菅楽器の駆け上がり・駆け下りを交差したものを加えています。Trooping the Colourはただ兵隊が街道を行進するだけではありません。行進が一通り終わり、空を見あげると、空軍の儀礼飛行が行われます。特に目玉は「レッド・アローズ」(日本でいうブルー・インパルスに相当する飛行部隊です)による曲技飛行であり、レッドアローズが空で連隊を組みながら、イギリスのユニオンジャックを表す三色の煙を放出しながら空を駆け抜けます。この木管楽器の階段フレーズはこの3色の煙を放出するレッドアローズの様子を表現しています。実際のTrooping the Colourでは最後のフィナーレとしてこれが行われるのですが、それに合わせて曲の最後にこれを持っていく良い曲構成はどうしても作れなかったので、そこはあまり拘らずに曲の中でここぞ!というところでこの木菅の階段フレーズを入れるようにしています。単調にならないように出てくるたびに都度楽器の組みあわせも変えています。基本木管を使っていますが、敢えてのトランペットにもこのフレーズを演奏させたりもしています。トランペットも結構吹奏楽では細かいフレーズ演奏させるものもあり、自分も吹奏楽ではトランペットをやっていたのですが、こういう細かいフレーズは大好きでした。なので、割と遊び心的な感覚でトランペットも階段フレーズに加えています。

ここのメロディの2週目は金管と木管のメロディの掛け合いにし、さらに疾走感を増す演出をしています。これは空軍が空を疾走していくイメージを表現したものです。

5) Cメロ (静)

ここで雰囲気を変えます。BPMもこれまで180だったところを、微妙にゆっくりにし(BPM172)、静かな曲展開に変えています。

この切り替えのやり方もレファレンス曲に頼りました。参考にしたのはこの曲です。

ソードダンサー 狂刃の女神OP

https://www.youtube.com/watch?v=9yVNzRdO4C0

※例によってリンクは張っていないので、視聴されたい方はURLをブラウザに張り付けて飛んでください。

1994年にPC98向けに発表された格闘RPGのオープニング曲です(ネタ古くてすみません…)。この曲、勇ましいメロディから一気に明るいやさしいメロディに変わり、そのあと元のメロディに回帰するところがあるのですが、これが絶妙に上手いのです。これをオマージュして曲の雰囲気を一気に変えて曲展開しました。場面としては軍旗行進や儀礼飛行から場面が切り替わり、イギリス王室の華やかな様子を表現したものです。詳細は次のBGA編で解説しますが、ここではBGAとしてはユニオンジャックがはためいている動画を使っています。本当はここでエリザベス女王を登場させたかったのですが、肖像権の問題とかありそうでやめました。

6) Dメロ(静から動へ徐々に盛り上げ)

静かなパートから、騎兵隊が駆け抜けるようにスネアのタカタン、という音を鳴らしながら、再び勇ましい軍旗行進につなげるために、金管のロングトーンの音階を徐々にあげ、曲全体を盛り上げていきます。

7) Aメロ(大規模編成+α)

そして、Aメロに回帰します。4の楽器編成に加えて、高音楽器のリズム隊も増やし、曲全体の盛り上がりをピークに持っていっています。

レッドアローズの階段フレーズはここでも駆け巡り、木管・金管の掛け合いフレーズで疾走感を演出しながら、冒頭から変わらない「勇ましさ」と「規律」を曲全体で表現しています。

8) エンディング

最後にはほぼ全楽器でリズムを刻み、大迫力の中、曲が終わるように演出しました。

5.まとめ

以上が曲全体の解説です。ポイントはメリハリの利いた曲展開で「勇ましさ」と「規律」を表現しながら、BMS作品としての疾走感も表現することをテーマにしながら、具体的な情景を思い浮かべて曲をつくっていったものです。

いかがでしたでしょうか?(…すみません、言いたかっただけです)

長々と説明してしまいましたが、この解説を読んだ後、もう一度曲を聴いて頂いた際に、新たな発見や感動を得て頂けるようであれば、本当に作者冥利につきます。

次回は少し先になるかもしれませんが、BGA解説編を執筆します。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました!

※作品やってみて、感銘受けたことや、お前何言ってんだよ、といった文句、目に余ったこと等何でもあれば、無名戦の開催期間は2020/7/5まであるようなので、それまでに是非インプレ投稿をお願いします…!貴重なご意見お待ちしています。

​無名戦会場 No.9 Trooping the Colour

http://manbow.nothing.sh/event/event.cgi?action=More_def&num=9&event=131

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